高という妻の、正面の敵となったのだと、お高は思った。磯五も、そう思った。そしてそのあらそいは、ついに刃《やいば》に血を塗るところまで突き詰められなければならなかったのだ。
 お高が、小婢《こおんな》に送られて、おせい様の玄関を出ようとしていると、入れ違いに、おせい様と同じ年配の、やはり裕福な商家のおかみらしい、粋《いき》なつくりの女が、おせい様を訪れて来た。
「まあ、吉田屋《よしだや》のお内儀さま、おめずらしい。さあ、どうぞ――」
 小婢が、こましゃくれた口で、そういっていた。

      六

 おせい様とは大の仲よしの藁店《わらだな》の瀬戸物問屋吉田屋の内儀お民《たみ》だ、いつも来て、じぶんの家《うち》のように勝手を知っている家だ。案内も待たずに、奥へ通った。
 藁店の吉田屋は、おもてにも、瀬戸物一式をならべて売っている古い店だが、それより、諸大名のやしきへ、屋根瓦《やねがわら》などを手広く納めているので有名な家である。お民は、そこの家つきの女房で、おせい様とは、雑賀屋の旦那がまだ生きているころから、芝居などは必ず誘いあわしてきた、したしい友達なのだ。
 中庭にむかった小座敷では
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