た。
おせい様のところへ出かけて行って、磯五には自分という妻のあること、磯五の人物、その他すべてを打ちあけるに限ると、お高は、思った。惣七が帰らないうちにと、手早く身じたくをして、玄関の用人部屋のまえへ行って、いった。
「誰かお駕籠を呼んでもらいましょうよ」
拝領町屋
一
お高は、下谷同朋町の拝領町屋にある、おせい様の家へ出かけて行った。それは、店屋にかこまれて、裕福らしい素人家《しもたや》が数軒かたまっている、そのなかのひとつだ。根岸《ねぎし》か向島《むこうじま》あたりにでもありそうな、寮ふうの構えで、うす陽《び》が塀《へい》ごしの松の影を、往来のぬかるみに落としていた。
お高は、鳥居丹波守《とりいたんばのかみ》の上屋敷と上野《こうずけ》御家来衆のお長屋のあいだを抜けて、拝領町屋の横町へ出て、雑賀屋のおせい様ときくと、すぐにわかった。細い千本|格子《こうし》をあけると、十六、七の小婢《こおんな》が出てきた。お高は、じぶんの名をいっても、おせい様が知っているわけはないと思ったから、小石川金剛寺坂の若松屋惣七のもとから参りましたとだけいった。
お高の
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