通されたのは、町家によくある、せせこましい中庭に面した、小じんまりした座敷だ。庭のむこうが土蔵の壁になっているので、部屋のなかは、夕方のようにうす暗いのだ。が、贅沢なつくりであることは、つかってある木を一眼見てわかるのだ。床柱など見事なものだと、お高は思った。
 お高は、待たされているまに、座敷のなかを見まわして、さびしい気がしてきた。あのおせい様のこころといっしょに、この家も、調度もみんな、いまに磯五のものになるのだと思うと、そんな馬鹿々々しいことを、いよいよ黙って見ていられないと思った。
 磯五という人間、自分との関係、磯五とおせい様、とこうならべて考えると、お高には、じぶんの立場と、なすべきこととがよくわかるのだ。だが、お高は、いまおせい様のまえにすべてをぶちまけようとしている自分の動機に、嫉妬がひそんでいることには、自分では、気がつかなかった。
 お高は、若松屋惣七のためとはいえ、若松屋惣七に内証で、こうして勝手に出かけてきて悪いことをしたとは思わなかった。若松屋惣七が帰って来て、留守に手紙がきたと聞いて、その手紙がどこにもなく、お高もどこかへ出て行ったら、何と思うだろうかとも
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