当方の都合があって、非常にいそいでいるから、できるだけ早く金を届けてもらいたい。それも、じぶんのほうへ届けてもらうのではなくて、日本橋の式部小路に、磯屋五兵衛という呉服太物商がある。ご存じかもしらないが、知らなくても、きげはすぐわかる。そこへ届けてもらいたい。じぶんの手にきても、どうせその磯屋へ持っていくのだから、どうかはじめから磯屋の店へ届けてもらいたい。一刻もあらそう場合である。くれぐれもお願いする。
というのが文面で、下谷同朋町拝領町屋、おせいよりとある。
お高は、手紙を、繰り返して読んだ。思ったとおりである。おせい様は、若松屋惣七をこんなに苦しめて取り立てた金を、右から左に、磯屋五兵衛へつぎこもうとしているのだ。磯五は、これを眼あてに、お高という妻のある身でありながら、中年すぎたおせい様をくどいて、家《うち》に迎えると称して、夢中にさせているのだ。考えただけでけがらわしいと、お高は思った。
お高は、手紙を、帯のあいだへはさんで、たち上がった。どうしても、若松屋惣七には、見せられないのだった。何とかして若松屋惣七に知らさずに、自分の手で防がなければならない。お高は、そう考え
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