、誰か凄腕《すごうで》の、そして正直|一轍《いってつ》の金がかりがついているといって、自分はすぐ、それは若松屋さまにきまっていると思ったほどではないか。
 そうだ。雑賀屋のおせい様に、とうとうその悪い虫がついたのだ。そのわるい虫は、たとえ名だけでも、じぶんの良人となっている磯五であると思うと、お高は、恐怖のようなもののために、寒さを感じた。おせい様は、あの磯五に与えるために、旦那さまからそのお金を取り立てようとしているのだ。そのために、この旦那さまは、身も商道もほろぼされようとしている。おせい様が、人もあろうに磯五に、金をみつごうとしているばっかりにである。
 お高は、けっして傍観するわけにはいかないと決心した。血走った眼が、若松屋惣七を見た。若松屋惣七は、行燈のほうへ首を傾けていた。風雨の音に、聞き入っているように見えた。
「あらしに、なりましたな」
「はい。ひどい吹き降りになりましてございます」
「もっともっと、ひどい吹き降りになろうもしれぬ」
「はい」
 お高の顔は、不自然に、白くかわいていた。眼だけは、そこから夏の星ぞらでものぞいているように、これも不自然に、かがやいて見えてい
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