持ちの方とおっしゃったようでございますが――」
「金持ちは金持ちです。ほかにも地所やら家蔵《やぐら》やら数多くあるのだが、それらはもちろん、わたしにあずけて利まわりを取ってきた金も、至急に用が出来《しゅったい》したから、是が非でも、耳をそろえて出せというのだ。なんとも妙なはなしである。裏に何かあるのかもしれぬ。何人かの呼吸《いき》がかかっているような気も、せぬことはないのだ。が、それとても、はっきりしたことはいえぬ」
「ほんとにそんな大金を、一時に何しようというのでございましょうねえ」
「おせい様は、きょうまでわしにいっさいをまかせてきたのだ。それが、今度のことに限って、なに一ついわぬ。若松屋惣七にも、見当が立たぬ。いくじがないようだが、かほど当惑したことはないぞ」

      五

「あの、おせい様――」
 お高は衝撃をうけた。おうむ返しに、その名が、口を出た。
「そうだ。おせい様という女だ。今まで名をいわなかったかな。はて、話したつもりであったが――うむ。知らぬも無理はない。お前が参ってから、書状の往復をしたことはなかったからな。いつも、つかいの者がまいって、口で話をきめるような
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