それではあんまり――」
「のみならず、東兵衛は東兵衛としても、わしと後家さんのあいだの貸し借りは、貸し借りなのだ。亡夫に遺《のこ》された財産だ。金のたてぬき[#「たてぬき」に傍点]は何ひとつ知らぬのだ、知ろうとせぬ女なのだ。夕方、お前の戻ってくる一|刻《とき》まえにも、また二度目の使い者がせき立てに参ったような次第で、困る。まことに、困る。おおぎょうに申すのではない。若松屋も、これぎりではないかと思うのだ」
「何とか、待ってもらえないものでございましょうか」
「それが、一日半日をあらそっておると申すのだ。じつに、まゆ毛に火のつくようなはなしでな」
「何しにそんなに急に、お金がいることになったのでございましょう」
「さっぱりわからぬ」思案の皺《しわ》が、若松屋惣七のひたいを刻んだ。
「それが、さっぱりわからぬのだ。使いの者にきいてみたが、使いの者は、いわぬ。知らぬらしいのだ。わたしは、具足屋のいきさつを話して、猶予を頼みこんだ。が、いっかなききいれぬ。聞こうとさえせぬのだ。何でもよいから、金をそろえろというのだ。いそぎの用があるというのだ。
具足屋につくすべてを見積もりにして出すから、
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