って行った。お高は、下男がいるあいだ、惣七から離れていた。雨戸のそとは、はたして、叫ぶ風と狂う雨とのあらしだった。樹々《きぎ》のうなりが、ものすごく聞こえてきていた。
 お高は、惣七の肩にじぶんの肩をあたえて、不釣り合いに大きく見える自分の膝の上で、惣七の指をもてあそんでいた。惣七は、それにまかせていた。考えていることのために、気がつかないふうだ。
「ずいぶんわたくしにお隠しなすっていろいろなことをしておいででございます。いつのまに、そんなことをなさるのやら――お出かけなすったことも、それらしい用事の人が、みえたようすもございませんのに」
 お高は、不服そうだ。
「ははは、まだお前の知らんことは、ほかにいくらもあるのだ」
「まあ、憎らしい」
「下らぬことをいわずに、聞け」
「はい」
「そういう約束である。一年のうちには、具足屋も、何とかもうけをみるであろう。また、いくらかでも稼業《かぎょう》が立ちなおってきたら、根こそぎ手放してもよいのだ。こう思って、その後家さんの金の中から入要《いりよう》な分だけ借りておいたのだ。
 先方にしてみれば、若松屋というものにまかせてある以上それをこっちが
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