た。
 翻弄《ほんろう》されぬいていた――眼のまえに、何か赤いものが躍《おど》り立つように、吉良は、感じた。

      四

「関東の武家、名は何といわるる?」
 正親町《おおぎまち》中納言が、ものずきに、岡部美濃守をふり返って、訊いた。
 饗応役は、勅使にしたがって、松の廊下まで来かかっていた。
「岡部美濃守です。」
 ぶっきら棒にいうと、中納言は、笑って、
「関東は武をもって治むる国である。頼母《たのも》しい御体格ですな。定めしお力があろう。見たい。」
「心得ました。」
 と、それを掛け声に、美濃守は、やにわに、すぐ前を往く吉良に手をかけた。
「何をなさる! 乱心――。」
 ※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]《もが》いたが、枯れた吉良のからだは、美濃守の両手に差しあげられて、頭のうえを高く、空に泳いでいた。
 烏帽子《えぼし》がまがり、中啓《ちゅうけい》が、飛んだ。と、吉良は、美濃守に受けとめられて、すうっと、労《いた》わるように、抱き下ろされていた。
 武骨な座興《ざきょう》――として、笑い声をあとに、天奏衆は、もう、かなり先へ進んで行っていた。出雲守をはじめ、あ
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