さが、吉良に、この報復の機会を得たことを、痛快がらせた。横眼に、美濃守を見やって、待っていた。
勅使の一行が、近くへ来たとき、吉良は、わざと低声だった。
「美濃殿――。」
聞こえないらしかった。
「美濃殿!」
のっそりと、美濃守が、答えた。
「何じゃい。」
「お席が違いますぞ。」
「はあ?」
吉良は、面白くなってきた。
「お席が違う。」急調子に、「お席が違うというに。これ、お席――。」
「なに? 何をぶつぶついわれおる。」
美濃守は、大きな肩を丘のように据えて、動こうともしなかった。
「本座にお直りなさい、本座に!」
「本座? 本座とはどこですかな。」
「しっ! さような大声を――早く、本座へ!」
「わからぬことをいうなっ。本座とはどこだ。」
「何を申す!」吉良が、きっとなった。「急場になって、本座はどこだなどと訊いておるどころではない! ええいっ! 本座へ控えるのだ、本座へ。」
つと起った美濃守が、小腰をかがめて、すり足に、見事に、お抽斗《ひきだし》へ直《なお》るのを見ると、吉良は、かっとした。
美濃守は、はじめから知っていて、自分を揶揄していたのであったことに気がつい
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