、おとしたのだった。
扇面が破れて、一、二本、骨が折れた。
「お! これは、とんだ――。」
叫んだ時、御影堂が、足袋はだしで駆け降りて来た。
「何をしやがる! 直すのに、また何日かかると思うんだ――。」
「粗相だ。許せ!」
もう一度、よろめいて、わざとでないように、扇を踏みにじりながら、辰馬は、微笑をふくんで、逃げ出していた。
三
勅使が、玄関に着こうとしていた。吉良上野介は、お掛縁《かけえん》に控えて、最後に、すべての配《くば》りはよいかと、あたりを見廻した。
岡部美濃守が、じぶんとおなじように、玄関に着座しているのに、気がついた。
いままでは、強情我慢で、そしてまた、どこからか聞きだしてきては勤めてきたが、身についていないということは、争《あらそ》えないと吉良は思った。
仕方がなかった。それが、ここに現われたのだった――そう考えて、吉良は、ちょっとおかしかった。
吉良は、高家筆頭だから、そこにいるのが当然だったが、
「岡部が、ここに出しゃばっておるとはなにごと! 今に、顔の上らないほど、手きびしくたしなめてやろう――。」
扇箱以来の美濃守への不愉快
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