若譜代大名、諸番がしら、物頭、お医師まで拝観、とある。おぼえておけ。」
 吉良は、死人のような顔いろになって、美濃守を白眼《にら》んで立った。

      二

「や、どうも、おっそろしく混みいった注文だったもんで、すっかり手間を食っちゃいましたが、やっとできましたよ。」
 京都の御影堂本家の主人は、店に、本尊|法然《ほうねん》の像をまつって、時宗だったから、僧形で妻帯していたが、円頂で扇をつくって京の名物男だった。
 それに、負けず劣らずだった、江戸の御影堂は、坊主ではなかったが、口の荒い職人膚だった。やはり、一風かわった人物だった。
 辰馬が、吉良家から来たといって、でき上った扇を受け取りに行くと、奥の、手文庫のようなものから、自分で出してきた。
 手のうえに置いて、離すのが惜しいといったように、惚《ほ》れぼれと眺めた。
 辰馬は、屋敷侍らしい着つけで来ていた。口も、そんなようにきいて、
「いかさま、見事――眼の果報じゃ。」
「なにしろ、凝ってこって凝り抜いたもんでわしょう? どうですい、この扇骨《ほね》の色は。十本物だが、磨きは、自慢じゃあねえが、蘭法でも、ちょいと新しい式でね
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