くしゅしんじゅつ》と標題のある工学書を参考して、
「ええと、何だって?――木地を塗りて玳瑁《たいまい》あるいは大理石《マルメル》の観をなさしむる法、とくらあ。まず材をよく磨きてのち、鉛丹《たん》に膠水《にかわ》、または尋常《よのつね》の荏油《えのゆ》仮漆《かしつ》を和《あわ》せたる、黄赤にしてたいまい[#「たいまい」に傍点]色をなすところの元料《もと》を塗る。さてこれに、血竭二|羅度《らど》、焼酎十六度よりなる越幾斯《エキス》にて、雲様の斑点《とらふ》を模彩《うつ》す。かつ、あらかじめ原色料《くすり》をよく乾かすよう注意《きをつけ》、清澄たる洋漆を全面《そうたい》へ浴《あ》びせるべし。」
 常磐橋《ときわばし》の東の、石町《こくちょう》一丁目にあって、御影堂《みかげどう》として知られた、扇をつくる家だった。京都五条の橋の西の御影堂が本家で、敦盛《あつもり》の後室《こうしつ》が落飾して尼になり、阿古屋扇《あこやおうぎ》を折って売り出したのが、いまに伝わっているといわれていた。おうぎ形の槻板《つきいた》に、大きく屋号を書いた招牌《かんばん》が、さがっていた。
 そこの工作《しごと》場だった
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