た。
「すっかりやってあるわい。」つぶやいた吉良は、裏切られたような別の怒りが、こみ上げてきた。「何からなにまで、法どおりに準備《ととの》えおったらしいぞ。」
奥から、美濃守の大声が聞こえてきていたが、取次ぎが、吉良の来たことを知らせても、出てくる気配はなかった。
久野と十寸見に案内させて、各部屋を見て廻りながら、吉良は、歯を食いしばっていた。
「これでよい。何も申すことはござらぬ。美濃守は、手前以上に御存じでいらっしゃるから――。」
と、ふと、座敷の隅を見て、
「あそこには屏風《びょうぶ》が一双ほしいところじゃが――。」
閉めきった隣りの室から、声が聞こえてきた。
「兄上、ここを開けましたる次の部屋に置きます屏風は、狩野《かのう》法眼《ほうげん》永徳《えいとく》あたりが、出ず入らずのところと――。」
そのとおりだった。永徳とは、適《かな》ったことをいうやつ――誰だろう、と吉良は、不審に思った。
ぐっとつまって、立ちすくんだように黙っていると、隣室からは、美濃守の声で、
「これ、辰馬の申すように、永徳の屏風をひとつ、つぎの座敷へ入れておくのじゃ。」
係の者が、承知して、頭
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