を下げているようすだった。
五
平茂が、目見得に伴《つ》れてきて、ちょっと顔を見た時から、吉良は、気に入ってはいた。
が、何となく、したしみ難いところがあった。といっても、妾《めかけ》奉公を承知で来ている女には違いなかったから、いずれは、先方から、そんな意味でのつとめを申し出るであろう、と、吉良は、そのままにして、迫らないでいるのだった。
夜になって、吉良が寝《しん》につく世話をしてしまうと、女は、さっさと自分の部屋へ退って行った。側女《そばめ》として来ているのに、そうすることが当然であるような、女の態度だった。しかし、格別避けているようでもなかった。何でも、はきはき返辞をするし、愛想はいいのだった。
名を訊くと、お糸といった。請人《うけにん》の平茂の話では、親元は、長谷川町のほうで仏具師をしているとのことだった。吉良には、お糸がどんなつもりでいるかわからなかったが、了解《りょうかい》しているはずのことをことごとしくいいだすのも業腹《ごうはら》だったし、それに、食べようと思えばいつでも食べられるものを、眼のまえに見ながら、いつでも食べられるだけに、そして好きなも
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