?」
「は。」十寸見が、かわって、「修繕《ていれ》は、何も要《い》りませんそうで。」
「なに、手入れはいらん?」
「ただ、お庭だけはちょっと掃除しておけばよいと申されました。」
「そうか。」美濃守は、青い空を仰いで考えていたが、「壁の塗りかえは?」
「質《たず》ねましたが、まったく不要との御返事でした。」
「障子の貼り替えは?」
「それも、心配いらぬとのことで――。」
「畳がえは、どうだな。」
「今のままで結構といわれましたが――。」
「廊下、厠《かわや》などは、もとより丹念に磨かずばなるまい。」
「いえ、ざっと掃くだけでよいとの――。」
美濃守は、大きなからだを揺すぶって、上を向いて哄笑《わら》った。
「御苦労。いや、それでよくわかった。大儀、大儀――それではな、さっそく手配して、庭から屋内から、すっかり修理するようにいたせ。」
「しかし、」久野が不審気に、「そういう必要がないと吉良様が――。」
「よい。黙って聞け。壁は、なかなか乾かぬから、至急に塗りかえさせろ。」
「ですが、吉良さまがおっしゃるには――。」
「障子の貼りかえ、畳がえ、廊下、厠の掃除、万事念入りに、な。」
久野と
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