[#「ぱっ」に傍点]と税所郁之進が飛び出して、呼吸を弾ませて奎堂の前に手を突く。
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郁之進 (臆病に)わ、わたくしの帯刀でござります。
奎堂 たしかめますが、この多門三郎景光でござるぞ。しか[#「しか」に傍点]とお手前の刀《もの》に相違ありませぬな。
播磨 郁之進の刀か。それがどうした。
奎堂 はっ、おそれながら、これはもっての他の凶相。手前、もはや三十年の余も刀相を観ておりますが、かような悪相は初めてでござりまする。
播磨 ほほう、どう悪い?
奎堂 必ずお気に留められませぬよう――主君に崇りをなす相が、ありあり[#「ありあり」に傍点]と浮かんでおりまする。(座中愕然とざわめき立つ)
播磨 なに、余に仇《あだ》を? 郁之進か――うふ、うふふ、思いあたることが無いでもない。
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お加世は殿のかげに、いっそう身を縮める。
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郁之進 (懸命に殿の前へいざり寄って、平伏する)と、とんでもない! この男は山師でござります。詐欺師でござりま
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