色をなし、にわかに恐怖昏迷の体。
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矢沢 (一同の興味を他へ転ぜんと)なに、そんなことですか。さような微々たる――ははははは、殿、お庭を御覧じませ。美しき下弦《かげん》の月。昼間のお歌のつづきをこれにて。さぞや御名吟が――。
播磨 (脇息を打つ)ええいっ! ごまかそうとするかっ! いま奎堂の言ったことを申せ。余はその刀相が聞きたいのだ。
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仕方がないと、矢沢と奎堂は二、三低声に相談して。
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矢沢 しからば、お人払いを願いまする。
播磨 なにを大仰な! ならぬ! この、一同《みな》のおるところで言えっ。
矢沢 (奎堂へ)御貴殿から言上――。
奎堂 いや、あなたよりよしなに――。
矢沢 しかし、観相なされたのは、貴殿ゆえ、貴殿より申し上ぐるが順当です。
播磨 早く言えっ! 聞こう。
奎堂 (観念して)では、その前にちょっと諸士に伺いますが、このお刀は、どなたの――?
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一同顔を見合わす時、人々のうしろからぱっ
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