終わり]
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奎堂 (虚ろな声で)これは吉相――。
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言いかけてまた前の一刀を手にとる。
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奎堂 うむ! そうだ! たしかに! ――いやいや! わしの眼の曇りであろう。恐しいことじゃ。
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投げ捨てるようにその刀を置いて、つぎを取ろうとする。その手は顫《ふる》えている。一同はこの奎堂の異様なようすに、眼を瞠《みは》り、粛然としている。
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矢沢 (いきなり進み出て、つぎの刀を取ろうとする奎堂の手を押さえる)しばらく! ただならぬただいまのお言葉、気掛りでござる。その刀がいかがいたしました。かまわずお打ち明け下されたい。
奎堂 (ちらりと上座の播磨守を見やって)いやいや、何でもござらぬ。何でもござらぬ。拙者の眼違い、けっしてお気に支《さ》えられぬよう。(と蒼白な顔でごまかして、いそいでつぎつぎに刀を見る)これも吉、これも吉、これは――。
矢沢 久保氏、其許《そこもと》の
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