下げ]
などと、片端から片づけてゆく。そのうちに、鞘を払ったと[#「と」に傍点]ある一刀にじっと見入って、おや! という思い入れ。一座に、さっと真剣の気が流れる。
奎堂は無言で、長いこと凝然とその刀相を白眼《にら》んだ後、ただならぬ面持ちで近くの燭台の下へ急ぎ、灯にかざして改めてとみこうみする。
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奎堂 (驚愕狼狽の表情で呻く)ううむ!
矢沢 (愕いて)いかが召された。何かその刀に、御不審の点でも――。
奎堂 (はっと心づきたる態)いや、なに――ははははは、何でもござらぬ、ははははは。
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強《し》いて笑いに紛《まぎ》らそうとしながら、しきりに首を捻る。
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奎堂 (まだ刀を見詰めながら、思わず知らず)はてな? よもや――しかし、どう観てもこの線の切れが――(強く自分へ)いや! さようなことのあるべきはずはない。わしの気の迷い、気の迷い――。
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恐しそうにその刀を下へ置き、次ぎを取り上げる。
[#ここで字下げ
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