みかねやす》、左文字大銘《ひだりもじだいめい》に切ってござろうな。左陸奥守――いたって吉相。常用差しつかえござらぬ。(つぎの刀を受け取って)うむ、虎徹《こてつ》が出ましたな。これも善相。いや、ちょっとお待ちを――ふうむ、少々|相《すがた》が荒びておりますな。めったに鞘走《さやばし》りいたしませぬように、ちと御用心を。
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つぎつぎに刀を観《み》ていく。一同は帯刀を下げて、交《かわ》る代《がわ》る起って奎堂の前へ行き、相を受けては座に帰る。いつの間にか人々の背ろに、税所郁之進が来て坐っている。それと見て、加世は播磨守のかげに身をすくめる。
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奎堂 これは佐々木一峰の作とお見受けいたす。吉凶あいなかば――次ぎ。筑前利次ですな。素直な相でござる。つぎ――守正でしょうか、安永でしょうかな。可も不可もなし。おつぎは――金道の二代目あたりと観ますが、これはいささか凶相を帯びております。お差料には御遠慮あったほうが、お身のおため――。
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そのたびに、喜ぶ者、頭を掻くもの。笑声、讃嘆の声々湧
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