禍福を試みて、その言い当てるところ、万に一つの誤ちもござりませぬよし。
奎堂 いえ、それは過褒《かほう》と申すもの――。
播磨 一段と興を覚えたぞ。その剣相の達人が幸い一座におるとは面白い。
矢沢 されば、今夕《こんせき》のお慰みに――いや、おなぐさみと申しては、奎堂先生に失礼でござるが、一同の刀を相せしめましてはいかがで。
播磨 奎堂足下、皆の刀を一見して、吉凶禍福を申されよ。
奎堂 それでは、未熟ながら仰せにしたがいまして――。
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と座を改めて、まず播磨守の佩刀を小姓に乞い受け、うやうやしく一覧する。
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奎堂 さすがは太守のお腰の物、領民鼓腹、お家万代のはなはだ吉相、上々吉と観相つかまつりまする。相州《そうしゅう》でございますな。正宗でございますな。まことに御名作で。
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次ぎに家老矢沢の刀を観相し、同じく賞《ほ》める。それより席順に諸士の刀を受けては、相を案ずる。
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奎堂 ははあ、陸奥守包保《むつのか
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