に傍点]なのが集まっていますから、加勢を頼んで、これからすぐに追っかけましょう」
「頼むぞ」
「なあに殿様、一本路に女の足だ。世話あござんせん」
いうまも丹三、どどどどうん、と階下へおりて、ぱっと外へ出るが早いか、仲間を呼びに、庭木のむこうに灯《ひ》のもれている部屋へ走った。
雲の底には月があると見えて、うっすらとした光が一面にこぼれてはいるが、それとても足もとを見定めるたしにはならない。
何度かつまずいてのめりながら、ちらちら[#「ちらちら」に傍点]とうしろを振り返って、女は泳ぐように道を急いだ。
追っ手らしい影も見えない。
往っても行っても果てしのない屋敷町。
大きな家が黙々として両側に眠って、塀内の杉の巨木が笑うようにざわめく。
夜空の一角がほのかに赤いのは下町の灯。
すると、ここもお江戸のどこかだろう。
ほつれた鬢《びん》の毛を口にくわえて、女は長い坂を下った。
曲がり角。
遅じまいの一軒の小店、お内儀らしいのが大戸を閉《た》てている。
それへ女が声をかけた。
「今晩は、ちょっと伺いますが、あの、あたし、すっかり道に迷ってしまって、ここはどこでござんしょ
前へ
次へ
全240ページ中95ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング