かまわない。このうえはただ一歩でも遠く、この気味の悪いがらあき[#「がらあき」に傍点]の屋敷を離れたいと、女は、はだしに夜露を踏んで、よろめきながら、かけ出した。
 このとき、二階の部屋へはいった三人の男、見まわすまでもなく女の影も形もない。
「それ御覧《ごろう》じ、御前、みんごと抜けられたではござりませぬか」
 いまいましそうにいったのは猫侍。
「えっ! 逃げた※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」
 丹三がとんきょうな声をあげた。
「なあに、きっとまだお庭にうろうろしていまさあ。私が行って引っつかまえて来やしょう」
「まま、待て。た、丹三、待て」
 とび出そうとするところを、呼びとめた吃りの侍、ぐっと丹三の肘《ひじ》をとって引き寄せて、何事か低声《こごえ》にいい含める。
 こうしてああしてと、計略でも授けているらしい。
 三人寄れば文珠の智恵。
 どうせろくな相談ではあるまい。
「では、あの、私が――」
 丹三がうれしがって叫んだ。
「そ、そうじゃ。き、貴様、誰か四、五人連れてな」
「名案々々」
 猫侍も小手を打っている。
「あい、ようがす。ちょうど部屋に場ができて、けち[#「けち」
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