女は気が気でない。
 突然、主人らしい吃りのほうが笑い出した。
「ははははは、うむ。裏面《うらおもて》の家を違えて、ま、ま、迷い込んだというわけじゃな。か、かまわぬ。ここ、これ、あけてみい」
「は」
 いよいよ来た! もうだめ。あけられたら百年目。どういう連中か知れたものではない。何といってのがれようと、女は内部であせったが、さて、こうなってはどうすることもできない。もはや手が鎧櫃へかかったらしい。
 とうとうこいつらの手に落ちるのか。
 近々と力を入れる呼吸《いき》づかいが荒い。
「なかなか固うござります――厳重――念入りに――いや、からげたわ、からげたわ」
 いうまもぱらり、ぱらりと締め緒の解ける音。
 これが運命!
 死んだ気。
 いも虫じゃあないけれど、丸くなってじっ[#「じっ」に傍点]としているに限る。しかし、乙に変なまねでもしかけたら何としよう!
 それにこのお金!
 と、女が内懐《うちぶところ》を押えた刹那《せつな》、ぱっ[#「ぱっ」に傍点]と頭上の覆《ふた》があいて、外部の冷気とともに黄色の光線《ひかり》の帯が、風のように流れ込んだ。
 手燭を持ち添えた大きな顔が二つ、
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