。おらあちと思惑《おもわく》があるんだ。首尾は夜|自家《うち》で聞こう」
「しかし親分、ここは一つ手を借りてあの稚児《ちご》どんを引っくくったほうが早計《はやみち》でがしょう」
「まあいいや。御苦労だが、行って来てくんねえ」
しかたがないから安兵衛、
「ごめんやす」
と一言仏頂面に頬かむりをして歩き出す。
別れた文次は、あとをも見ずに急いで昌平橋《しょうへいばし》へかかった。まず連雀町へ寄るつもりであろう。が、橋の半ばで歩がゆるむと自然とその場に立ちどまって、袂から取り出したのは、一枚の小判。
さっき二階の鎧櫃の底にあったものだ。
人間の悲願|煩悩《ぼんのう》を一つにこめて、いつ見ても燦《さん》たる光を放っている。
欄干へ寄って、いろいろと陽にあててながめていると、
「おや! ふうむ、これあ妙だわい」
何か発見したらしい。おどろきと喜悦《よろこび》、つぎにこわい表情が文次の顔に三《み》つ巴《どもえ》を巻いた。手早く金を袂へ返して、何思ったか走り出そうとしたが、よっぽど泡《あわ》を食っていたものと見える。どうん[#「どうん」に傍点]とぶつかるまで向こうから来る人に気がつかな
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