がちの瞳《め》、江戸じゅうの遊里岡場所をあさっても、これだけの綺麗首《きれいくび》はたくさんあるまいと思われるほど、名代の女形《おやま》が権八にふんしたような、実にどうも優にやさしい美男。
これにつけて思い出すのは、津賀閑山の下男久七が、確かに女のような若いお武家さまが鎧櫃をお受け取りになりましたと申し立てていること。ははあ、さてはこいつだな、と文次はひそかにうなずいたが、それにしてもこの二枚目、何しに空屋にうろうろ[#「うろうろ」に傍点]している。
白粉《おしろい》焼けのような、荒淫《こういん》にただれた顔に桜花《はな》の映ろいが明るく踊っているのが、男だけにへんに気味が悪い。
「何だ。貴様らは何だ?」
口の隅から侍がいった。文次は二度びっくりした。その声であるが顔や姿とは似も似つかない。これはまたどら猫を金盥《かなだらい》へたたきつけたような、恐ろしいじゃじゃ[#「じゃじゃ」に傍点]ら声なのだ。
「何しに参った?」と手を帯へはさんだままで、「うむ、これ、何しに来たのだ」
文次があきれて黙っていると、侍は、ぞっとするようななよなよ[#「なよなよ」に傍点]したからだつきで鼻がく
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