をかき乱さずにはおかないあるやさしい悩ましさを宿しているところを見ると、この守人、ことによると、いたるところで思わぬ罪つくりをしているかもしれない。
 それはそうと、相手が洒落気たっぷりの老人だ。何か見せる物があるとのことだが、真に受けていいものかどうかとあやぶむように、守人はくすぐったそうにほほえみながら近づいてゆく。
 そんなことにはおかまいない。玄鶯院は石のように大まじめだ。
「これじゃ。何としても御辺に見せたいと思うたは、これじゃよ」
 といきなり足もとの落ち葉を指さした。
「ははあ」
 感心を装った守人、来たな、また何か人の悪いおち[#「おち」に傍点]があるのだろう、と考えたのでにやにや[#「にやにや」に傍点]黙っている。
 ところが、玄鶯院は珍しく口がすくない。しゃがんで、棒きれで落ち葉の山を突ついてる。
 いつまでたっても突ついているから守人のほうからきいてみた。
「それが、何でござりまする」
「これかの」
 と老人が顔を上げたとき、黒豆のような瞳がきらと輝いているのに、守人ははっ[#「はっ」に傍点]と息を呑んだ。
「これか」玄鶯院がいう。「これは、見らるるとおりの朽ち葉
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