なかなかおりませぬが、此奴《こいつ》はなかなか使えそうで。――」
「起こしてみろ」
 蒲団を蹴上げると、すっかり職人風に作った守人が寝ている。が、安がいるから何にもならない。文次の憤怒《ふんぬ》と恨みをこめて見た眼を無視して、安はとんきょうに叫んだ。
「ああ此奴です! 此奴だ! 此奴だ! 此奴が水戸の篁守人、顔にも覚えがあるし、肩をしらべれば、傷のあるのが何よりの証拠。――」
 おお、そうだ――と邦之助の手が、寝ている守人の肩へ伸びた刹那《せつな》、もうだめと思ったか、むくり[#「むくり」に傍点]と起き上がった守人の手が夜具の下へ行ったかと思うと、隠していた帰雁が、白刃《はくじん》一|閃《せん》! おどり出たと見るまに、早くも捕手の一人、血煙立って倒れる。
 同時に、文次の手には脇差、部屋の隅にふるえていたと見せかけたお蔦といえども剛の者だ。護身の短刀を手に――ここに深夜、殺剣の乱陣は開かれた。
 行燈は消えて真の闇。
 捕手の群れを相手に、守人、文次、お蔦の三人がここを先途と立ち働く。
 踏み鳴らす足音、打ち込む気合い、魂切《たまぎ》る声、火花、白閃――。
 そのあいだに四つの影だ、
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