手を引き合うようにしていろは屋の物干《ものほし》から外へのがれ出た。
「やあ、い、いないぞ」
「逃げた、逃げた!」
「おお、安兵衛が斬られている」
「うむ、御免安兵衛が。みごとからだが二つになっているなあ。それにしても守人と文次へ一刻も早く手配りを。――」
 という声々をうしろに聞いて、文次と守人、お蔦、おこよの四人は、すでに闇に呑まれていた。

   烏羽玉の闇に朝が来た

 それからまもなくだった。
 新網の瑞安寺では掏摸の故買《けいず》の市が立って、神田連雀町の湯灌場買い津賀閑山が、江戸中の掏摸のすって来た煙草《たばこ》入れ、頭の物、薬籠などを競《せ》っていると、その場の宰領手枕舎里好のもとへ、人魚のお蔦が駈け込んで、これからいろは屋文次と、篁守人を先頭に、一挙して姿見の井戸へ押しかけ、うばたま組をあばこうという――よかろう、面白かろうというので、里好もおどり立った。
 雲州、江州、遠州、なんかという強い乾分《こぶん》がそろっている。本堂から方丈へかけて寝泊まりしたり、ごろごろ[#「ごろごろ」に傍点]している親分乾分の掏摸を集めると百人近い人数になった。それが夜明けへかけて、湯島
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