》のたまりの新網の瑞安寺《ずいあんじ》へ逃げてしまったが、遊佐銀二郎だけは、うばたま組の頭の命のままに、今にもここへやって来るというのだ。
 ここへやって来てどうする!
 いうまでもなく文次の命を目的に。
 と、聞いて文次は、手早くそこの戸へ心張りをくれると同時に光る眼で女を見すえて、
「して、お前さんそれをしらせに駈け抜けて来てくれたってえわけですかえ?」
「はあ、止めようと思って争いましたけど、きかずに来るもんですから、私は近道をして一足先に参りました。――どうぞお支度を」
「すると、来るのは一人ですかえ?」
「ええ遊佐銀二郎という――」
 と、このとき、その女のことばをおうむ返しに、
「何? 遊佐? 遊佐が来る?」
 と、いう声に二人が驚いて振り向くと、いつのまにおりて来たのか、文次の袢纒《はんてん》に、愛刀帰雁を引っつかんだ篁守人の立ち姿!
 一目見るよりお蔦はころぶように駈け寄って、
「貴方《あなた》は守人様! お久しうござります。ど、どうしてここに。――」
 守人はわれとわが身を疑うもののごとく、しばし女の顔をみつめていたが、くずれるように、上がり端《はな》へあぐらをかくと
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