文次が、飛び起きて出たが、すぐにはあけない。
「誰だ、誰だ、今ごろ。何の用だ?」
「その、ちょ、ちょっと、おあけなすって。――おあけなすって。ここを。一大事、一大事でございます」
 と、いう女の声。
 はて――どこかで聞いたような、と思った文次が、細目に戸をあけてのぞくと、そこを外から引きあけて、ころげ込んで来た女がある。肩息で頭髪《かみ》を振り乱し、遠くを駈けて来たものらしく、はいると同時にべたり[#「べたり」に傍点]となったのを見ると、あの、一足違いで、三味線堀の里好の家から逃げられてしまった人魚のお蔦だ。
「おお、お前さんは!」
「ええ、あの、私のほうはあとで存分にお縄をちょうだい致しますから、ちょっと、私のいうことをお聞き下すって――ああ、こういうまも、もどかしい――親分様の上に大変が迫っております」
 水をやって落ちつかせたうえ、女のいう所を聞いてみて、さすがの文次もぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]とした。
 女は、今夜うばたま組の選にあたって、井戸から出されたというのである。しかもその仲間というのが、手枕舎里好と遊佐銀二郎!
 里好は井戸を出るとすぐ闇にまぎれて、その掏摸《すり
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