、そのままお蔦を引き寄せて大刀を持つ手で、ひしと抱き締めながら、
「お蔦か。おお! お蔦だな。お蔦だな――どうしておった。痩せたな。苦労したか――苦労したか、あいたかったぞ」
声の出ないお蔦、守人の膝にすがって、身をもんで泣くばかり。
仔細《しさい》ありと見てか、場をはずした文次、再び帰ったときは、手に脇差《わきざし》の鞘《さや》を払って、
「さあ、さあ、つきたての餅みてえにくっつい[#「くっつい」に傍点]ているときじゃありませんぜ。ここでね、文次もちょいと殺生のまねをしなくっちゃならねえ。お二人は二階へ。――」
そのことばの終わらないうちに、戸の外で、銀二郎のだみ声だ。
「いろは屋さんはこちらですか。いろは屋の親分!」
「はい」
文次は静かに答えて守人の顔を見る。涙にぬれるお蔦を押しやった守人、ひそかに帰雁を引き抜いて、あけるがいい、あけるがいい――と目くぼせ。
「あんたは怪我人だ。なあに、あっし一人で大丈夫――」
「遊佐なら人手を待たぬ。俺《わし》の心を察して、俺にまかせてくれ」
命がけの仕事を二人は争っている。
飼い犬に手をかまれるとは
ぱっ! 文次が戸をあ
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