が寝返りでもして、みしり[#「みしり」に傍点]と音がすると、邦之助が天井をにらむようにする。そのたびに文次は命の縮まる思いをした。
ではなぜ、こんな思いをしてまで岡っ引きたるいろは屋文次が、江戸中の御用の者が、草の根を分けて探している当の死に花の下手人、公儀へ弓引く不逞《ふてい》浪士篁守人をかばわなければならなかったか。
それは文次自身にも説明のつかない心持ちだった。
が、文次の眼には、守人が、そして守人の所業が、守人一人としては映らないのだ。そのかげにある大きな力、人力ではどうすることもできぬ時代の流れといったようなものがあるのをひしひしと感ずることができる。
「おいたわしい。このお方は御自分を犠牲にして、何かしらもっと[#「もっと」に傍点]大きなもの、もっと正しいもの、もっと明るいもののために、働いておらるる、それをお邪魔だてしようとする自分は、取りも直さず古いものの力によって動かされているのではないかしら。――こいつあ一つ考えねばならぬ」
こう思ったとき、岡っ引きとしての文次は死んで、新しい侠児《きょうじ》、いろは屋文次が生まれたのだった。
が、守人の心には文次の真意は
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