っ引きなど、何人|彼奴《あいつ》の手にかかって、嗜人草のために生命《いのち》を落としたかしれやしねえ。ねえ、親分、なおりしだい引っくくって恐れながらと突ん出すおつもりでがしょう。そうすれゃまた一つ、いろは屋の親分に箔《はく》が附こうというものさ」
 御免安兵衛は文次の顔を見るたびに、こんなことを言い言いしていたが、文次は、じろり[#「じろり」に傍点]と安をにらんで守人のこととなると黙っていた。そして、安兵衛をはじめ姉のおこよにも堅くいい含めて、二階に得体の知れない浪人の怪我人がいることなどは、口外はもちろん態度《そぶり》にも見せないようにさせていた。一度などは夜ふけてから、いきなり、
「文次、いるか、ちょっと急な用で、通りがかりに、寄ってみた。方来居のほう、うばたま組のさぐり、諸事、その後はどうじゃな」
 こういって思いがけなく同心税所邦之助が乗り込んで来たとき、文次は実に、薄氷を踏む思いだった。
 いつも、こういう上役は二階へ招じ上げて対談することになっているのに、その夜に限って階下《した》で話をすることが、何らかで相手を怪しませはしないかと、文次の心配は大変なものだった。二階の守人
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