さっそく出かけろ」
 と、他の一人に合図をすると、そいつが先に立って歩き出す。お蔦を始め三つの袋がそれに続いたとき、うしろで、
「御苦労だな。ぬからずやって来てくれ」
 と、いう饗庭の声がした。
 部屋を出ると長い廊下。角に金網行燈《かなあみあんどん》が一つ、ぼんやりとあたりを照らしているほか、人気のない饗庭家の裏、すなわち空家の影屋敷である。
 黒い袋をかぶった帝釈丹三に連れられた三人が、押し出されるように影屋敷の裏木戸を出ると、月のない外は墨を流したように暗い。
「庭の桜の木へ袋を脱いで掛けて行け」
 といった伊織のことばを思い出して、三人は立ち止まって袋を脱いだ。三つをまとめて、その庭の桜の下枝へ掛ける。
 いかに暗い夜でも空には明りがある。それでお蔦の姿を見て驚いたものか、今、袋を脱いだ一人が叫んだ。
「やや女ではないか」
 いわれてお蔦、暗黒を透かして見ると、守人を恋する前、両国に世帯をもって、子までなしたことのある水戸浪人の遊佐銀二郎!
「お! あなたは!」
「や! そちはお蔦。――」
 かけ寄ろうとすると、もう一人の男が、あいだに立った。
「よう! はいるもいっしょなら、
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