一つの袋が歩き出す。
 他の袋がついて行く。
 まるで、南海の怪鳥《けちょう》が行列を作っているようである。それはもうお蔦でもなければ、里好でもない。二人はただ、うばたまの闇黒にうごめく烏羽玉の果《み》の一つ二つだ。
 木の下道のような暗い細いところを、あれで二、三十歩も行ったであろうか。
「下りだ、気をつけなさい」
 という里好の声で、お蔦が足をすべらせないように木で張った梯子段《はしごだん》をおり切ると、眼の前の二間ほどの所に、荒筵《あらむしろ》が二枚だらり[#「だらり」に傍点]と下がっていて、その目を通して、何やら黄色い光が、地獄の夢のように、ぼうっともれている。
「お仲間がたくさんいますよ」
 里好の声は笑っていた。

   どうも不思議な御縁だねえ

 こうしてお蔦が井戸の底の生活にはいったのは、何日前のことであろうか。
 夜も昼もないここでは、日のたつのは数えようもなかったが、三つの食事を一日としても、もうだいぶんの日数がたっていなければならない。そのあいだに何が起こり、どんな出来事が発生したか。
 何事もなかった。
 ただ、同じ扮装《いでたち》をした三百人近くの人数と
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