それよりも、互いにはじめて見る顔の中には、子は父を、姉は弟を発見して、どんな人間の悲喜が交錯することであろうか? 仇敵《かたき》同士もいよう。別れた恋人も潜《ひそ》んでいるやもしれぬ。めいめいに秘めためいめいの半生、それが何であろうと、この井底の大部屋では、いっさいが黒である。一色の黒である。
 互いに識らぬ三百の黒法師のむれ。
 このなかに誰がいることか――それはわからないが、ただ、二人の人間が紛れこんでいることは確かだ。
 人魚のお蔦と手枕舎里好。
 が、それも今では、同じ装《つく》りの多人数に呑まれて、二人は離れ離れになっている。
 姿見の井戸――これはそもそも何であろう? どうして人々はここへ集まってくるのか? いかにして井戸の底へはいりこむのか? 制服のような黒い袋はいったいどこから来るのか? 何のための宿泊か? 集合か?
 これが、ここへ来て数日、お蔦のこころをとらえた疑問であった。と、そのすべてが自ずと解かれる期《とき》が来た。
 白衣《びゃくい》――それは白い袋の謎《なぞ》である。

   誰が誰やらわからない

 それこそ烏羽玉《うばたま》の夜だった。
 人魚の
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