「むろんだ。抜け!」
 守人は、刀にからんだ羽織を取って、ふわりと遠くへ捨てた。そこらに落ちて、再び足にからんではたまらない。
「うむ。そんなにこの首がほしいか」こういいながら、銀二郎は足もとの石ころを二つ三つ、注意深くけちらした。場のしたくである。
「なあ、篁」
「何だ?」
「おぬしとの手合わせ、久しぶりだなあ。故郷表《くにおもて》では、始終わしが稽古をつけていた。あれから、すこしは上達したか。こんなものは場数じゃよ。木剣のつもりでかかってこい!」
「よけいなことを――行くぞ!」
「お手柔かに、だ。はははははは。来いよ、さあ! 来いっ!」
 柄《つか》にかけた右手が、ぴく[#「ぴく」に傍点]――と動いたと見るや、鞘《さや》走りの音もなめらかに、銀二郎は平正眼、やんわりと頤《あご》を引いて、上眼使いにぴたりときまった。守人は下目につけている。
「お!」
「や!」
 双方、ひたひたと寄る。
 ちりん[#「ちりん」に傍点]と鋩子先《きっさき》が触れ合う。
 と、互いに、はね返るように離れて、
「つうっ!」
「たっ!」
「は!」
「ようっ」
 無言。呼吸を合わせているのだ。
 里見無念斉
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