つ! と思いきや、どっこい! 賊の刀は上がり口の板をかんで、余勢がざあっ[#「ざあっ」に傍点]! と畳を切り開いたばかり。
文次のからだはもう奥との通路の暖簾口にあった。と、そこに、覆面の黒装束が立っている。ふところ手だ。
ぴたっ[#「ぴたっ」に傍点]! 顔と顔、文次と侍、しばしにらみ合いの体だ。文次のうしろには、一刀を取り構えた見張りの賊が、退路を断って凝然動かない。蒼白い文次の顔、そいつがにっこり[#「にっこり」に傍点]した。
「津賀閑山に用があって参りました者。そこをお通しください」
「閑山はおらぬ、用とは何だ」
「閑山はおらぬ? そんなわけはありませぬ。要談の約がありますゆえ、待っておりますはずで――」
「黙れ! おらんからおらんと申す。それともはいって、自身が見届けねば得心せぬというのか」
「閑山に会って話があります」
「閑山に会っても話はできんぞ」
「どうしてですね?」
「そのわけか。うん、見せてやる。こうだ!」
つ[#「つ」に傍点]と侍が身をどかすと、狭い一間の行燈のそばに、閑山と飯たき久七、二人ともぎりぎり[#「ぎりぎり」に傍点]にしばり上げられて、おまけに猿轡《
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