。こっちは俺にまかしとけ、早く行かねえと見えなくなる」
「うん。そうだった。じゃあ親分――」
「気をつけてな」
安の姿は、返辞とともにもう闇黒に呑まれていた。守人は銀二郎を、御免安は守人を、二組の尾行がもつれもつれて、こうして神田を出はずれて行った。
あとに残った文次、そっと戸口にたたずんで家内《なか》の気配をうかがうと――、
さながら仏事でも行なっているように、灯《あかり》がかんかん[#「かんかん」に傍点]ついて、人声がする。
この夜ふけだ!
しかも怪しいのはそれのみではない。呼吸《いき》を凝らしている文次の耳へ、陰深たる寂寞《せきばく》[#ルビの「せきばく」は底本では「せばく」]を破って、かすかに聞こえてくるのは、かの猫侍は内藤伊織のじゃらじゃら声ではないか。
「よし来た、一つ見届けてやれ」
きっ[#「きっ」に傍点]と胸に決した文次は、手早く履物《はきもの》を脱いで、くるくると手ぬぐいで巻いて懐中すると同時に、跫音《あしおと》を盗んではいりこんだ。うす気味悪くしん[#「しん」に傍点]としている。
店頭《みせさき》に行燈《あんどん》が一つ。
昼間でさえ、あまり気持ちの
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