文次、思わずあっと叫んだ。


    うばたま組


   こころ二つにからだは一つ

 津賀閑山の古道具店、おもての大戸の一枚が一尺ほど引きあけられて、赤っぽいもれ燈《び》がぼんやり往来を照らしているんだが、通りがかりに何げなくのぞいた文次は、そのままぴったりそこへとまってしまった。
 闇黒《やみ》をすかしてゆく手に道を見ると、守人であろう、黒い影がすべるように進んでゆく。守人は遊佐銀二郎をつけているのだから、こっちのほうも逃がしてはならぬ。といって、閑山の家の中も――ただならぬようす。
 こころ二つにからだは一つとは全くここのことだ。文次はぐい[#「ぐい」に傍点]と御免安兵衛の腕を握って、見失わないように守人の跡へ瞳《め》を凝らしながら、
「安!」と耳打ち、「お前はどこまでもあのあとをつけて行け、饗庭の邸へ行くらしいが、何が起こっても俺が行くまで手を出すな」
「あい、承知しやした。して、親分は?」
「俺あちょっとこの閑山とこへ寄って行く」
「閑山とこへ? 戸があいてますね」
「うむ、押し込みらしいんだ」
「え! 押し込み※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」
「まあ、いいってことよ
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