ころからのことである。いうまでもなく、守人が玄鶯院の嗜人草を持ち歩いて、これと思う者へ附着せしめていたのだ。これがいわゆる死に花の恐怖である。
で、守人が夜歩きをするのはそのためだった。そして、深夜または夜ふけに帰ってきて、守人が玄鶯院に指を出して見せるのは、花をつけて来た人数を示すものだった。
ところへ、不意にあの税所邦之助の来襲である、うまく一同を二重天井へ隠して事なきを得たものの、どうしてもれたのか守人は不思議でならなかった。
誰か内通でも――?
そう言えば思い当たるのが遊佐銀二郎である。
あれからこっち、銀二郎は姿を見せないのだ。
守人がまだ故郷の水戸で里見無念斎《さとみむねんさい》の道場に通っていたころ、師範代をつとめていたのが遊佐銀二郎、それから江戸の両国で銀二郎は人魚の女のお蔦と同棲《どうせい》していたが、そこで守人はお蔦を見て、二人は、恋し恋される仲となったのだったが――。
あのお蔦はどうしたろう?
いや、思ってはならぬ。
が、銀二郎の行動こそは奇怪である。
しばらく行方《ゆくえ》をくらましていたと思ったら、はじめて先夜の会合に顔を出して、それ以来ま
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