らないことに力を入れていうな。が、しかし、その毒物、本朝の産ではあるまい」
「と手前ども一統も愚考致しておりまする」
「うむ。つぎに、烏羽玉組《うばたまぐみ》とやら申す斬《き》り取《と》り強盗の輩がいよいよ跳梁《ちょうりょう》しおるとのことだが、また、例のあの一派の浪人ばらの動静はどうじゃな」
「御前」
「何だ」
「それについて失礼ながらお耳を」邦之助はいっしょうけんめいだ。「お耳打ちをお許しくださいますよう」
「おお誰もおらん、そこでいえ」
「なれど、念には念を、とか申しまするで」
「さようか、では苦しゅうない。近う」
一世一代の勇気を出した邦之助、手を膝がしらに、腰をかがめて大まわりにまわって直弼の耳もと近くかしこまった。
咽喉仏《のどぼとけ》をがくがく[#「がくがく」に傍点]させて何かささやいている、細かくからだを振りながら聞いている平べったい彦根殿の顔が、見るみる驚愕《きょうがく》にゆがんだ。
「うむ、うむ――なに? そうか。ううむ、そち、それは真実《まこと》だろうな」
「まずこのねらいははずれますまいと存じます」
「ふうむ。彼奴《きやつ》か。あの男なら識っとる。それくらい
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