だが、わざと膝で胸を突き上げたから、はらりと懐中《ふところ》の袱紗《ふくさ》が解けて、十手の先が襟もとからのぞく。
これでたくさん。
柄《つか》へ掛けた手のやり場に困って、内藤伊織はごそごそ[#「ごそごそ」に傍点]脇腹をかいている。
「覚えておれ」
「きっとこの返報はするからな」
せいぜいすごみを見せて、伊織と丹三、早々に引き上げて行った。
「いや、どうも悪いやつらで、一時はどうなることかと思いましたが――あ! ところで親分、女はどうしましたえ?」
閑山は文次の手を取らんばかり。が、
「爺つぁん、あんまり灰《あく》の強い悪戯《わるさ》はしないがいいぜ」
言い捨てて文次が立とうとすると、手早くいくらか紙に包んだ閑山、文次の手に押しつけようとしたが――、
「おら、その金を閑山のしゃっ[#「しゃっ」に傍点]面へたたきつけて来た」
と、もうこれはつぎの日である。
浮世小路いろは寿司の奥。
朝寝の床から手を伸ばして、こういいながら文次が煙草《たばこ》を吸いつけているそばに、きちんと膝っ小僧をそろえているのは、久しぶりに乾分《こぶん》の御免安兵衛。
金魚売りの声が横町を流れている
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