何んだかわからないが、はや往来に人が立つほど、丹三の声は威勢がいい。これが閑山には一番痛いとみえて泣かんばかりにあやまっている。
 ふ[#「ふ」に傍点]と文次が台所を見ると、もとは自分から起こったことというので、自責と悲憤に耐えないのだろう。飯たき久七が茶碗酒《ちゃわんざけ》をあおって、泪《なみだ》と鼻汁《はな》をいっしょにこすり上げているさわぎ。いやもう、裏もおもてもたいそうなにぎやかさ。
 この騒動の最中に、伊織がそっと手でもひろげて見せたものと見えて、
「へえ、五両で。よろしゅうございます」
 という閑山の声。つづいて伊織が、
「ばかを申せ。五百だ、五百両がびた一文欠けても引きはせぬぞ」
 いよいよ本筋へはいったのが聞こえた。
 もうよかろうというので、文次は腰を曲げて店へ出て行った。
 ぽん[#「ぽん」に傍点]と前掛けの裾をたたいて、ぴたり伊織の前へすわる。
「どうも先ほどは」
 伊織も丹三も驚いたが、あっけにとられたのは閑山老だ。ぽかんとしている。
「何だ。貴様は」
 伊織、白を切った。文次は笑う。
「よく御縁がござります。へへへ、手前は此店《ここ》の手代で」
「手代? 見た
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