どきこわあい[#「こわあい」に傍点]眼をするようだが――」
 考えていたって始まらない。
 まあ、いいさね。
 そのうちにはわかるだろうよ。
 ひとり者の乱雑さは、いつも女性《にょしょう》を親しい心持ちに微笑させるものだ。
 姐《ねえ》さんかぶりに女房々々した女、やがてかいがいしくばたばた[#「ばたばた」に傍点]そこらの掃除《そうじ》をはじめた。
「まあ、たいそうなほこりだこと!」
 押入れをあけると洗濯物《せんたくもの》の山。
「ほほほほ、よくもこうためたものだねえ」
 べったりすわってくすくす[#「くすくす」に傍点]笑っているうちに、女はふっ[#「ふっ」に傍点]とさびしくなった。これが、思う殿御との新世帯なら――。
 三輪《みのわ》あたりに住まいして、わたしは内で針仕事。
 丸髷《まるまげ》姿の自分を描いて、女は小娘のように、ぽうっと頬をあからめた。
 壁に三味線がかかっている。久しぶりの爪《つま》びき。
「恋すちょう身は浮舟のやる瀬なさ、世を宇治川の網代木《あじろぎ》や、水にまかせているわいな」
 夢みるような瞳《め》、横ずわりの膝をくずして、女は、いつまでもうっとり[#「うっと
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