やがて番茶をすすりながら、そそくさと楊枝《ようじ》を使って、里好がちょっと改まった。
「昨夜《ゆうべ》はひどく疲れていなすったようだから、そのまま寝かして進ぜたが、お前さんはどこの人かね?」
よくきかれる問いである。女はさっそく用意の嘘《うそ》を出した。
「はあ。浅草のお福の茶屋、うれし野のおきんと申す者でございます」
御免安のことばがこのさい大いに役に立ったわけ。
「へえい!」と里好はすっとんきょうな声を出した。「今評判の別嬪《べっぴん》嬉し野のおきんさんてなあお前さんのことかえ。いや、知らぬこととはいいながら数々の無礼、このとおりおわびを、はっはっは」
「あれ、おなぶりなすってはいやでございます。別嬪などと、ほほほほ」
「いや別嬪だ、誰が何といっても別嬪だ。ふうむ、してまた、その嬉し野のおきんさんがどうして昨夜のようなことに?」
「はい」と口ごもったが、一つ嘘をつけばあとはわけはない。
神田の親類に用たしに行った帰り、途に迷って悪者に襲われているところへ、通りすがりのあなた様に助けられまして――と女は鎧櫃のことなぞおくびにも出さずに、すらすらといってのけた。そして、
「あの
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