ら、おとなしく待つ気で手を控えると、かたわらの暗いところからのっそり[#「のっそり」に傍点]と現われた人影。
 通人《つうじん》めいた頭巾なんかかぶりやがって、丹三の野郎、乙《おつ》に片づけやがったなと、まず坊主頭がせいぜいいきり立って突っかかった。
「待てたあ何でえ。この女に用のあるわけはねえ」
「そっちになくともこっちにあるから呼んだのだ」
 ようよう! 丹三、なかなかうめえぞ!
 ごろつきたち心中いっせいに感心している。
「おや、しゃら臭えことをぬかすぜ」
 八百長だと思うから坊主頭が鼻息が荒い。
「用てえのは何だ。さっさといわねえか」
「そこにいる女を貰い受けたいのだ」
 いよう! その調子、その調子!
 めりはり[#「めりはり」に傍点]が合ってだんだん雲行きが急になる。
 連中はもう投げられる心構え。
「何をっ! 女がほしい? へっ、女がほしけりゃ腕で来やあがれ」
「ようし! では、腕で取るからそう思え」
「そう思えが聞いてあきれらあ」
「ならば取って手柄にせよ、だ」
「畳んじまえ、畳んじまえ」
 縁日に夕立ちが来たよう、しきりに畳め畳めとどなっている。肝心の女が片隅で見物し
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