来い!」
 侍が提灯を上げた。これが合図。うしろに数人の跫音《あしおと》が迫る。
 が、守人は見むこうともしない。
 どこを吹く風か、といったふう。
 気を焦った長身肥大の侍、足を開きざま、
「やっ!」
 抜き打ちにざーあっ! と横なぎ、傘を切った。
 がっし!
 青い火花が雨に散って、いつのまに鞘《さや》を出たか、帰雁の利刃《りじん》が押して来る。
 ぎ、ぎ、ぎ、と鍔《つば》ぜりあい。
 深夜。
 もうここは堀田原《ほったはら》の馬場。
 久しぶりに一つ帰雁に血膏《ちのり》をなめさせようか。
 ぐるりと右にまわって見ると、刀を伏せた黒法師の群れが、はうように慕い寄っている。
「こしゃくな!」
 気合いとともに、無念流引きよせの一手、つつ[#「つつ」に傍点]と手もとをおろした。虚をくらった侍、思わずつり込まれて体がくずれる。
 そこを!
 ざっくり一太刀《ひとたち》、帰雁が黒頭巾を割り下げた。
 苦もない。今までしゃべっていたやつが、脳漿《のうしょう》を飛ばしてそこにころがっている。
 死骸をまたいで、守人は帰雁を青眼に影の円陣に立った。さっ[#「さっ」に傍点]と輪が開く。手近の一人
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